るる実です。
好きな漫画の話をしようかな。
みなさん、なかなか人にはいいづらいかと思いますが、安全な場所から人の醜い部分を見て、安心することってありませんか。
絶対に巻き込まれない位置から見る、街中で勃発したケンカとか…。
お金を借りてまでパチンコに行きまくる人間の特集番組とか…。
「ああ、やっぱ人間ってダメなんだ…。」って。しょーもないんだなって。
そういったものを見るのが好きな人にはぜひオススメの漫画です。
今回は「ヨイコノミライ」という漫画について書いていきますね。
全4巻。心がかき乱されてページをめくらずにボヤボヤする時間もありますが、比較的さくっと読めます。
漫研に入部した編集者志望の主人公・井之上は、部活の時間にまったく漫画を描かずオタクの馴れ合いをしている部員たちに悩まされていました。
そんな主人公が、たまたま保健室で出会った女の子のアドバイスを受けて、部誌を制作するぞ!と奮闘するストーリーです。
話の筋だけ見れば、一見はオタク青春モノ…のようですが。
読んでるうちに、その部誌制作を巡って、部員たちの精神的に未熟な部分がどんどん読者に露呈し、漫研の人間関係が崩壊していくさまが描かれています。
作中の「保健室で出会った女の子」のセリフでは、部活メンバーのことが下記のように紹介されています。
・「現実が直視できないオカルト少女」
・「文芸部からはみだしたボーイズ作家」
・「声優気取りで甘えた声…。自己愛の強烈なナルシスト」
・「口ばっかりプロの半可通」
・「なんの取り柄もない、ただオタクに居場所を感じているだけの無能オタク」
ヨイコノミライ1巻1話より
上記でお察しの通り…保健室で出会った女の子・青木杏が見せかけの八方美人を炸裂させてサークルを掻き乱していきます。
しかし、杏はちょっと事が進むように揺さぶっただけで、漫研崩壊の要因は漫研部員たち自身の未熟な性格にあると感じさせられます。
(それを見越しての揺さぶりだと思いますが)
彼らはただ部誌を作ろうとしただけなのに。
どんどん絵が上手くなる友人への嫉妬心
「現実が直視できないオカルト少女」 こと平ちゃんと、 「口ばっかりプロの半可通」 こと萌絵ちゃん (改めて読むとほんとひどい説明だな) は小学生の頃からずっと共に過ごしてきたオタク仲間。
二人の関係は親友と言ってもいいですね。
好きな先生のイラストの模写から始めて、コツコツと絵を描く努力を続けてきた萌絵ちゃん。
書き始めてから今まで恥ずかしがって見せていなかった絵を平ちゃんに披露します。
平ちゃんが「模写…?」といいますが、萌絵ちゃんがイチから書いたオリジナルイラストだと判明します。
ストーリーは書ける(しかし内容はかなり電波チック)が絵は全然上達しなかった平ちゃんは、萌絵ちゃんのイラストの上達に焦りを隠せません。
すこし話が進んで、萌絵ちゃんとケンカした日、嫉妬で発狂してしまいます。
「私のほうが先に漫画家を志したと言うのに!」BSS状態みたいになってますね。
しかし、絵描きなら、一度は感じたことある感情じゃないかな…と、このコマのセリフには共感してしまいます。
平ちゃんが萌絵ちゃん以上に努力していたかは不明ですが、どんなに練習してもうまくならないことだってありますよね。
私も、自分のイラストにアイデンティティを見出すことができなければ、一生この感情に縛られ悩み続けていたと思います。
この漫画の魅力は、「なにかしらの問題のある部員たち」に共感してしまうところにもあると思います。完璧な人間など居ない。
「絵を描くことが楽しい!」という気持ちを知れた萌絵ちゃんは、作中でもどんどん画力の成長を見せつけていきます。
対して、嫉妬に溺れ、現実を直視しない平ちゃん…。 この二人の差は、関係に亀裂を入れていくこととなります。
中途半端な気持ちでOKした男女交際
親友のイラストの上達に発狂してしまった平ちゃんですが、恋の方は(一方的に)順調なようで、前々から気になっていた(主人公)井之上とのお付き合いを始めます。
しかし、井之上は、別に平ちゃんのことは好きではありません。
主人公が杏に告白して振られ、自暴自棄になっていたところで平ちゃんが主人公に告白したため、「(どうでも)いいですよ…」といい加減に告白をOKしてしまったのです。
そんな中、一度告白を断られた杏から「私とも、つきあってください」と、二股を持ちかけられます。
もちろん、平ちゃんの周りの関係をクラッシュさせるための策略で。
そんなことも知らずに、もともと杏のことが好きだった主人公は二股することを承諾してしまいます。
うまいこと動いてるんですよね杏が。
怖いけど、自暴自棄になって好きじゃない人と付き合ってしまうのもどうなんだ、主人公…。
「嘘やごまかしで作った関係なんて、こわれた時にどうなるか、ちゃんとお勉強しないと」
ヨイコノミライ 2巻9話より
この主人公、「いい加減な奴」感が何度も何度もにじみ出てきます。自覚はできているみたいですが…。
付き合うってなんだろう。これは本当に求めてた男女交際なのか。好きじゃない人と付き合ってしまった。一度付き合ったら振りにくい。そのまま距離を置いて、気まずくなる。
こういうのはおそらく思春期あるあるじゃないでしょうか。
この作品は、「オタク」と「恋愛」の両立で、すべての歯車がどんどんずれていくのがわかる…。
フワフワした、人間関係に未熟な精神がそうさせている…。
オタクの生きづらさ
登場するのはオタクだけじゃなくて、クラスのスクールカースト上位の女の子が居たりします。
漫研部自体とは全く絡みがないので、ちょこちょこしか出ないですが…。
漫研部3年生、 声優志望の大門夕子。
彼女はクラスの女子から仲間はずれにされています。
スクールカースト上位女子たちは、夕子のぶりっ子できゃぴきゃぴな喋り方をバカにして、キャハハ~wと笑いものにしてます。
このシーンを見ていると思わず頭を抱えて「アッアッアーーッア!!!!!」とデカイ声を出してしまいたくなります。るる実のは被害妄想なんですけど。
教室ってほんとに狭い世界なんですよね。
世界の端っこまで行っても逃げられない。
陰キャの学生生活ってそういうことを感じがちですよね。これは体験談なんですけど。
わたし個人的には自分が一番かわいいって思ってる女の子好きですけどね…。
とにかく平ちゃんがスゴい
平ちゃんは、最初の印象だとクラスに1~2人は普通に居るような「あ~、オタクはこの道通るよね」って感じのバリバリオタク女子なんですけど、思い込みが激しかったり、自分に不都合な出来事があっても自分の中で都合の良いように解釈する力が強すぎて「ああ…もうダメだこの人…」となってしまいます。
なにか不都合な事があると「霊が…」とか、「操られてる…」とか、厨二病全開の解釈で突き進んでいきます。
でも上で言ったように、共感してしまう部分もあるんです。
るる実も、現実をみたくない時期ってありましたから。
読まれる際は、平ちゃんにぜひ注目してみてください。
なぜ、杏は漫研を潰しにかかったのか…。その理由は、断片的に判明していきます。
最終巻のあとがきで、サトウナンキ先生は「オタク文化が好きだからこそ、暗い部分も無かったことにしたくありませんでした」 と綴っています。
嫉妬、ストーカー、浮気、承認欲求、軽薄、自傷、妄想、責任転嫁、メンヘラ、期待に応えたい気持ち…。渦巻いて渦巻いて、少しずつ崩壊していきます。
一応のハッピーエンドと、ラストのホラー展開(?)含め、全体的に痛々しいお話なのですが、オタクの負の描写が好きな人にはぜひオススメの漫画です。
まだまだ、訳ありな部員がたくさんいます。
ここまででストーリーの1割以下ぐらいしか内容を話してないので、興味持たれた方はぜひ読んでみてください。
おまけ
ちなみに「ヨイコノミライ」作者のきづきあきら先生とサトウナンキ先生は、「なんで処女じゃないんですか!」のセリフで有名な「メイド諸君!」という漫画も描かれています。
こちらも負のオタクっぽくて非常に期待しています。
かなり気になっているので、購入したら読もうと思います。